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410: 風吹けば名無し 2019/03/28(木) 21:17:52.20
大学生の娘がいる。
小さい頃はパパっ子で、俺が抱っこしないと寝ないくらいべったりだったが、
思春期になると殆ど会話もしなくなって、嫌われこそしないけど、関わりもない親子関係に変わっていった。
まぁこうして遠くから見守っておくのがいいのかな、そんなものかなと思いつつ、何か寂しさも感じていた。
もうパパは必要ないから、と、そんなふうに言われたような気持ちをどこかで抱いていた。

先日、胃癌の疑い有りと診断されて、精密検査を受けることとなった。
娘にはまだ言わないでおこう、きちんと診断されてからでいい、無駄な不安をかけることはないと妻と相談したのだが、
普段仲の良い妻と俺がこそこそしてるのを訝しんだのか、妻と検査のことなどをやりとりしてるメールを見られてバレてしまった。

携帯を突きつけて、これ何!と詰め寄る娘を宥めようと、まだ検査中だからと説明しようとしたが、
携帯を胸の前で握りしめた娘が、ぽろっと涙を流したので、黙りこくってしまった。

娘は、友達のパパは皆元気なのに!なんでパパなの!なんで!、と荒々しく吐き捨てたあと、急に小さな声になって
「やだよ、本当はパパのこと大好きだよ。まだパパがいないと駄目だよ、まだ頼りたい、そばにいて欲しい……」
とつぶやいた。
目をぎゅっとして、顔を真っ赤にして泣く癖は、昔から何も変わってないなぁ、身体は大きくなってもまだまだ子供だなぁ、
と懐かしく思っていると、俺の目からも涙がこぼれた。
親にとって、子供はいつまでたっても子供だと言うけれど、なるほどそうだなぁとしみじみ思った。

ちなみに検査したところ、胃癌ではなかったので、今娘とすごく気まずい空気になっている。
唯一妻だけが、俺と娘を見ては嬉しそうに笑っている。

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